先週の金曜日の日経新聞で「健康経営」の一面広告が目についた。 “「健康経営」とは、これまでコストとみなされがちだった、従業員の健康維持・増進のための活動を、経営視点での投資ととらえる考え方です。(7月25日日経朝刊より抜粋)”
一般の方には“健康経営”は聞きなれない概念だと思います。歴史的にひも解くと健康経営(Healthy Company)の概念は、この1980年に米国のロバート・ローゼン氏によって提唱され、欧米の産業界に広まったようです。即ち、会社が従業員の健康に配慮することが会社の収益性の向上に貢献するというものです。日本には約20年遅れの2005年NPO法人「健康経営研究会」が健康経営を商標登録して啓蒙活動を始めています。
日本独特な背景として、一部の識者の意見では以下のような意見があります。
- この時期は健保組合の財政が悪化し始めた時期と一致する。実際、2008年以降数千億円規模の赤字が続いています。今後、高年齢者雇用安定法の改正の結果、65歳定年制が始まり健保組合の更なる財政悪化が避けられない事態となったこと。
- 一方で、デフレ経済と不況の長期化でリストラや整理解雇の結果、多くの企業でメンタルヘルス問題が深刻化してきたこと。日本全体で自殺者数も3万人の大台が2011年まで続き、その1割程度が勤務問題として認定されていること。ブラック企業という新語が注目された時期でもあり、企業も最早無視できない事態に追い込まれたこと。
確かに、欧米社会では転職は常識であるのに対し、日本は長く終身雇用制や年功序列が一般的であったことなどを考慮すると“健康経営”の視点が異なっているのは当然です。
しかし、筆者は日本でもむしろポジティブな変化が背景にあると見ています。
情報化社会やグローバル競争の進展でより創造的な発想や視点が必要になっていること、最早、猛烈型営業の時代から知的価値創造の時代へ転換していること。大きく知的創造性が求められる時代に心身ともに健全な形でなければ新時代に生き残れないということではないか。
私は健康経営自体は好ましい傾向だと思います。
しかし、やはり健康管理の最終責任は会社にあるのではなく個々人にあります。
喫煙、過剰接待、週末ゴルフとくれば糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病は時間の問題です。
更に、がんや動脈瘤の発見が手遅れになって逝った友人達を見てきました。何故、もっと早く真剣に注意や警告ができなかったのかと悔やまれます。
特に、職場での過労で突然死などの悲劇を避けるためには、人間ドックによるがん検査の他、50歳以上については心臓・脳ドックを毎年受診することです。
“本気ドックのすすめ”です。
「先ず隗より始めよ!」です。
参考文献:先進10事例に学ぶ「健康経営」の始め方
井上俊明著 日経BPコンサルティング
written by 筒井