- 日本人の食事摂取基準(2010年度版) 厚生労働省
- 2010年日本食品標準成分表 厚生労働省
- ビタミンの事典 日本ビタミン学会
ビタミンB1
ビタミンB1(化学名:チアミン)は水溶性ビタミンに分類される生理活性物質です。1910年に鈴木梅太郎氏が米ぬかから抽出し、オリザニンと命名したことでも知られています。
糖質や脂肪酸の代謝に補酵素として用いられます。各組織において酵素の作用により「チアミン二リン酸」に変換され、酸素呼吸を行う生物全般に見られる生化学反応回路の「クエン酸回路」の重要な反応に関与しています。
これらの反応で生成したエネルギーを用いて細胞が生命維持を行っています。糖代謝や激しい運動により生成したピルビン酸や乳酸が蓄積すると血液が酸性に傾き、これが疲労の原因と考えられています。ビタミンB1が十分にあるとこのピルビン酸を「クエン酸回路」に導くので疲労を抑える働きがあります。
摂取・代謝・排泄
ビタミンB1を多く含む食材としては、穀類、豆類、米ぬか、緑黄色野菜、牛乳などがありますが、水溶性ビタミンであるため、調理による損出が大きく、食品中に含まれるビタミンB1の総量のうち1/3は調理で失われていると考えられています。さらにビタミンB1はアルカリでは分解するといわれていますので、調理に重曹などを用いた場合に摂取量が減ってしまうことも考慮する必要があります。
厚生労働省は、健康な個人または集団を対象に、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すものとして「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」を策定しました。
食事摂取基準(単位:mg/日)
男性
年齢 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 |
0~5(月) | - | - | 0.1 |
6~11(月) | - | - | 0.3 |
1~2(歳) | 0.5 | 0.5 | - |
3~5(歳) | 0.6 | 0.7 | - |
6~7(歳) | 0.7 | 0.8 | - |
8~9(歳) | 0.8 | 1.0 | - |
10~11(歳) | 1.0 | 1.2 | - |
12~14(歳) | 1.1 | 1.4 | - |
15~17(歳) | 1.2 | 1.5 | - |
18~29(歳) | 1.2 | 1.4 | - |
30~49(歳) | 1.2 | 1.4 | - |
50~69(歳) | 1.1 | 1.3 | - |
70以上(歳) | 1.0 | 1.2 | - |
妊婦(付加量)初期 | |||
妊婦(付加量)中期 | |||
妊婦(付加量)末期 | |||
授乳婦(付加量) |
女性
年齢 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 |
0~5(月) | - | - | 0.1 |
6~11(月) | - | - | 0.3 |
1~2(歳) | 0.4 | 0.5 | - |
3~5(歳) | 0.6 | 0.7 | - |
6~7(歳) | 0.7 | 0.8 | - |
8~9(歳) | 0.8 | 1.0 | - |
10~11(歳) | 1.0 | 1.2 | - |
12~14(歳) | 1.0 | 1.2 | - |
15~17(歳) | 1.0 | 1.2 | - |
18~29(歳) | 0.9 | 1.1 | - |
30~49(歳) | 0.9 | 1.1 | - |
50~69(歳) | 0.9 | 1.1 | - |
70以上(歳) | 0.8 | 0.9 | - |
妊婦(付加量)初期 | +0.0 | +0.0 | - |
妊婦(付加量)中期 | +0.1 | +0.1 | - |
妊婦(付加量)末期 | +0.2 | +0.2 | - |
授乳婦(付加量) | +0.2 | +0.2 | - |
一般的に水溶性ビタミンは必要量を超えると、排泄されるようになります。ビタミンB1は、エネルギー代謝に関与するビタミンであることから、エネルギー摂取量当たりのビタミンB1摂取量と尿中へのビタミンB1排泄量との関係から推定平均必要量が算定されています。推奨量は、推定平均必要量×1.2としています。
ビタミンB1の慢性的な服用で、一部の健康障害などが報告されていますが、耐容上限量を算定できるデータは十分でなかったので策定していないと報告されています。
ビタミンB1は、食品による含有量の差が大きいので、食材を選んで摂取するように心がけましょう。経口摂取したビタミンB1は、消化管内の酵素によって加水分解され、チアミンとして吸収されます。日本の平均的な食事中のビタミンB1の遊離型ビタミンB1に対する利用率は60%程度であると報告されています。
過剰に摂取したビタミンB1は、速やかに尿中に排泄されるため過剰摂取に伴う健康障害などは報告されていませんが、欠乏すると、「脚気」、「代謝性アシドーシス」、「多発性神経炎」などが起こると考えられています。