ベリリウム
ベリリウムは、常温で灰白色の固体で、もろくて軽い金属です。エメラルドやアクアマリンなどの宝石の一種である緑柱石などの鉱物に含まれています。空気中では表面が酸化されて酸化皮膜ができるため腐食しにくく、また電気や熱の伝導性が高く、X線を透過しやすいなどの性質があるため、多方面の用途に使用されています。
ベリリウム自体は、音響用のスピーカーの振動板や光学ガラスに用いられるほか、航空・宇宙分野、原子力分野や医療用X線窓にも使用されますが、最終製品では他の金属との合金として使われることが多く、銅との合金がほとんどを占めています。ベリリウム銅合金は、電子機器用コネクター、ICソケット、スイッチ、パソコン部品や携帯電話部品などに使われています。なおベリリウムは化石燃料にも含まれているといわれています。
汚染・蓄積・排泄
人がベリリウムを体内に取込む可能性があるのは呼吸によるか、また、可溶性ベリリウム化合物などが皮膚に触れることによっても、体内に取込まれる可能性あると考えられています。過去にはベリリウムを取扱う作業場や製造所などで「ベリリウム症」と呼ばれる肺疾患が発生したといわれています。
体内に取込まれたベリリウムは、動物実験では、主に糞便に含まれて排泄され、少量が尿に含まれて排泄されます。経口摂取されたベリリウムは、消化管で不溶性のリン酸塩として沈殿するため、ほとんど吸収されないといわれています。
大気汚染とベリリウム
ベリリウムは、化石燃料、特に石炭に1.8~2.2mg/kg含まれており、火力発電所や製錬所などの石炭の燃焼により大気中に排出されているといわれています。一方、ベリリウムイオンのイオン半径がケイ素イオンに近いため、ケイ素と置換して造岩鉱物に多く含まれるといわれています。ベリリウムは、花崗岩、玄武岩、砂、土壌にも含まれており、極微量のベリリウムを塵埃として吸い込む可能性を考慮して大気汚染防止法で有害大気汚染物質として規制されています。
耐容週間摂取量について
国際的な規制としては、FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)により、一生涯にわたり摂取し続けても健康影響が現れない1週間の体重1kgあたりの摂取量が「暫定最大耐容週間摂取量」として0.002mg/kg体重/週と推定されています。
法規制など
規制法律名 | 規制項目 | 規制値 |
大気汚染防止法 | 有害大気汚染物質(優先取組物質) | - |
労働安全衛生法 | 第3特定化学物質(第1類物質)(ベリリウム及びその化合物) | - |
労働安全衛生法 | 製造の許可を受けるべき有害物(ベリリウム及びその化合物) | - |
労働安全衛生法 | 管理濃度 | 0.002mg/m³ (ベリリウムとして) |
参考資料
■化学物質ファクトシート 「294.ベリリウム及びその化合物」 環境省
■国際化学物質簡潔評価文書 No.32 ベリリウムおよびベリリウム化合物 国立医薬品食品衛生研究所