- 化学物質ファクトシート 「308.ニッケル」 環境省
- 化学物質ファクトシート 「309.ニッケル化合物」 環境省
- 化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0 No.69「ニッケル(Nickel)」 化学物質評価研究機構
- 化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0 No.115「ニッケル化合物(Nickel compounds)」 化学物質評価研究機構
- ミネラルの事典 朝倉書店
ニッケル
ニッケルは銀白色で腐食しにくく、展延性に富む金属のため、ステンレスやニッケル鋼の原料に使われるほか、耐熱鋼、磁石鋼、耐酸合金など様々な合金の製造に使われたり、ニッケル・カドミウム電池の電極や触媒などに使われています。また、純粋な金属ニッケルは、硬貨、家具や実験器具などの製造及びメッキに使われています。ニッケルは、地殻中、水中に広く分布しています。
ニッケルカルボニルという揮発性の有機ニッケル化合物はニッケル精錬の中間産物で、毒性が高いといわれています。そのため大気中の有害性について規制が設定されています。
存在・排泄
ニッケルの体内量は、成人で5mg前後といわれており、その分布は骨に最も多く、次いで、肺、皮膚、腎臓、肝臓の順で、臓器特異性などは認められないといわれています。
血中ニッケルの大部分はα1-マイクログロブリンなどのタンパク質と強固に結合しており、これらは交換不可能でニッケルを利用するためにはタンパク質を分解する必要があります。また、少量のニッケルは、血清アルブミンやアミノ酸とも結合していてこの場合は、容易に解離すると考えられています。
ニッケルは、微生物や植物中のウレアーゼやある種のデヒドロゲナーゼなど酵素の構成成分で、下等生物において嫌気性下で利用されます。ニッケルの生理機能としては、RNAの安定化、鉄の吸収促進、各種酵素の活性化、ホルモン作用に関与、色素代謝促進、グルカゴンの分泌亢進などが報告されています。
ヒトにおけるニッケルの必要量は、約100µg程度で、日常生活の中で食品などから、約300µg程度のニッケルを摂取していると考えられています。ニッケルを大量に含有している食品が特にあるわけでは無いので、中毒を起こす際は、ニッケル汚染食品が原因であると考えられています。動物においてニッケル塩の大量経口投与、胃腸などの消化器系を刺激して、嘔吐や下痢を起こしますが、金属ニッケルは比較的無害といわれています。しかし、ニッケルカルボニルなどの有機ニッケル化合物はヒトに全身性の中毒を起こすといわれています。
経口摂取されたニッケルは、ほとんど吸収されずに1~5%が消化管から吸収されるといわれています。吸収後は血清中のアルブミンと結合して体内に分布しますが、食事から摂取される量では体内に蓄積することは少ないといわれています。糞便及び尿から排泄されます。
ニッケルの有用性は未だ不明確ではありますが、健康のため摂取バランスを整えましょう!
ニッケルとアレルギー
ヒトでは250mgのニッケルを毎日経口摂取すると、ニッケルの起こす毒性として最も頻度の多い疾患であるアレルギー性の皮膚疹(ニッケル皮膚炎)を生じるといわれています。ニッケル皮膚炎は、ニッケル及びニッケル塩による接触性皮膚炎として古くから報告されています。
法規制など
規制法律名 | 規制項目 | 規制値 |
毒物及び劇物取締法 | 医薬用外毒物(ニッケルカルボニル) | - |
大気汚染防止法 | 有害大気汚染物質(優先取組物質) | - |
大気汚染防止法 | 有害大気汚染物質指針値 | 0.000025mg/m³以下 (1年平均値) |
水道法 | 水道水質管理目標値 | 0.01mg/L以下 (暫定値、ニッケルの量に関して) |
水道法 | 水質要監視項目 | 指針値は未設定 |
労働安全衛生法 | ニッケルカルボニル(管理濃度) | 0.001ppm (20℃換算で0.007mg/m³) |
日本産業衛生学会勧告 | ニッケル(作業環境許容濃度) | 1mg/m³ |
世界保健機関(WHO)では、ニッケルの1日当たりの耐用摂取量を体重1kg当たり0.005mgと算出しており、これに基づいて水道水質管理目標値 (暫定値)が設定されているといわれています。