- 化学物質ファクトシート「1.亜鉛の水溶性化合物」 環境省
- 詳細リスク評価書「亜鉛」 化学物質リスク管理研究センター
- ミネラルの事典 朝倉書店
- 日本人の食事摂取基準(2015年版) 厚生労働省
亜鉛
亜鉛は、非鉄金属の中では銅、アルミニウムについで多く生産されている物質です。亜鉛の化合物である塩化亜鉛は、亜鉛メッキの加工工程で皮膜を形成するために使われることが多いほか、染料や農薬などの合成原料、マンガン乾電池の電解液、活性炭の活性化剤などに使われています。また、硫酸亜鉛は農作物への薬害や土壌のアルカリ化を防ぐために農薬や肥料に混合されたり、ミネラル分を強化する目的で家畜用飼料に添加されることがあるといわれています。同様な目的で、育児やペット用の粉ミルクにも含まれている製品があります。
摂取
亜鉛は人や生物にとって必須元素であり、人の推奨摂取量は1日あたり3~15mgです。亜鉛を体内に取込む可能性は、食物からの摂取が多いと考えられていますが、健康への影響は小さいといわれています。
亜鉛は、タンパク質や核酸の代謝にかかわって、正常な生命活動を維持するのに必要な栄養素で、欠乏すると味覚障害、皮膚や粘膜への障害などが起こりやすくなり、一方、過剰な亜鉛摂取は、嘔吐や下痢を引き起こし、さらに必須元素のひとつである「銅」の吸収を妨げるおそれがあるといわれています。
厚生労働省は、健康な個人または集団を対象に、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すものとして「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」を策定しました。
亜鉛の成人の推定平均必要量及び推奨量は、アメリカ/カナダの食事摂取基準やその他の研究結果を参考に策定されました。亜鉛自体の毒性は極めて低いと考えられていますが、多量の亜鉛を継続的に摂取することで銅の吸収阻害による銅欠乏が発現するとの報告などを考慮して耐容上限量が設定されています。
代謝・排泄
体内に取込まれた亜鉛は血液中に入り、アルブミンやグロブリンと呼ばれるタンパク質と結合して体内の組織に運ばれます。体内で不要となった亜鉛は、大部分は糞便中に排泄されるほか、一部は汗や尿に含まれて排泄されます。
食事摂取基準(単位:mg/日)
男性
年齢 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用 上限量 |
0~5(月) | - | - | 2 | - |
6~11(月) | - | - | 3 | - |
1~2(歳) | 3 | 3 | - | - |
3~5(歳) | 3 | 4 | - | - |
6~7(歳) | 4 | 5 | - | - |
8~9(歳) | 5 | 6 | - | - |
10~11(歳) | 6 | 7 | - | - |
12~14(歳) | 8 | 9 | - | - |
15~17(歳) | 9 | 10 | - | - |
18~29(歳) | 8 | 10 | - | 40 |
30~49(歳) | 8 | 10 | - | 45 |
50~69(歳) | 8 | 10 | - | 45 |
70以上(歳) | 8 | 9 | - | 40 |
妊婦(付加量) | ||||
授乳婦(付加量) |
女性
年齢 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用 上限量 |
0~5(月) | - | - | 2 | - |
6~11(月) | - | - | 3 | - |
1~2(歳) | 3 | 3 | - | - |
3~5(歳) | 3 | 4 | - | - |
6~7(歳) | 4 | 5 | - | - |
8~9(歳) | 5 | 5 | - | - |
10~11(歳) | 6 | 7 | - | - |
12~14(歳) | 7 | 8 | - | - |
15~17(歳) | 6 | 8 | - | - |
18~29(歳) | 6 | 8 | - | 35 |
30~49(歳) | 6 | 8 | - | 35 |
50~69(歳) | 6 | 8 | - | 35 |
70以上(歳) | 6 | 7 | - | 35 |
妊婦(付加量) | +1 | +2 | - | - |
授乳婦(付加量) | +3 | +3 | - | - |
法規制など
規制法律名 | 規制項目 | 規制値 |
毒物及び劇物取締法 | 医薬用外劇物(無機亜鉛塩類) | - |
水道法 | 水道水質基準値 | 1.0mg/L以下 (味覚及び色の観点から亜鉛として設定) |
水質汚濁防止法 | 排水基準 | 2mg/L以下(亜鉛含有量) |
食品衛生法 | 残留農薬基準対象物質 | - |