- ミネラルの事典 朝倉書店
- 日本人の食事摂取基準(2015年版) 厚生労働省
リン
リンは、地球表層の地殻に10番目に多く含まれ、生体を構成する元素としては、炭素、窒素、カルシウムに次いで4番目に多く、約1%含まれています。リンはすべての生物にとって必須の元素であり、遺伝、細胞の成長と分化、エネルギー運搬、神経・筋機能など広範な役割を担っています。
リンは、リン酸塩として使用されることが多く、特に加工食品などの食品添加物として使用されています。食品添加物として使用基準が設定されてるものとしては、強化剤のグリセロリン酸カルシウムや酸性ピロリン酸カルシウム、糊料のでん粉リン酸エステルカルシウムがあり、使用基準の設定のないものとしては強化剤のピロリン酸第一鉄が知られています。
摂取
リンは、体内の生理機能の主役的な役割を果たしていて、カルシウムと結合して骨格などの硬組織を形成しています。また、あらゆる細胞中でエネルギー代謝に係る反応に関与しています。
厚生労働省は、健康な個人または集団を対象に、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すものとして「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」を策定しました。
日常食から摂取するリンの量は調理による損失を考慮しても不足になることは無く、むしろ食品添加物として各種リン酸塩が加工食品に広く用いられている関係で、現在ではリンの摂取過多が問題となっています。その他、研究データなどが不足している関係で、平成17年及び18年国民健康・栄養調査の摂取量の中央値が目安量に設定されています。
リンの摂取量に応じて血清無機リンが上昇することが知られており、リンの摂取に対しての性別、年齢や骨代謝への影響を考慮して耐容上限量が設定されています。
食事摂取基準(単位:mg/日)
男性
年齢 | 目安量 | 耐用上限量 |
0~5(月) | 120 | - |
6~11(月) | 260 | - |
1~2(歳) | 500 | - |
3~5(歳) | 800 | - |
6~7(歳) | 900 | - |
8~9(歳) | 1,000 | - |
10~11(歳) | 1,100 | - |
12~14(歳) | 1,200 | - |
15~17(歳) | 1,200 | - |
18~29(歳) | 1,000 | 3,000 |
30~49(歳) | 1,000 | 3,000 |
50~69(歳) | 1,000 | 3,000 |
70以上(歳) | 1,000 | 3,000 |
妊婦 | ||
授乳婦 |
女性
年齢 | 目安量 | 耐用上限量 |
0~5(月) | 120 | - |
6~11(月) | 260 | - |
1~2(歳) | 500 | - |
3~5(歳) | 600 | - |
6~7(歳) | 900 | - |
8~9(歳) | 900 | - |
10~11(歳) | 1,000 | - |
12~14(歳) | 1,100 | - |
15~17(歳) | 900 | - |
18~29(歳) | 800 | 3,000 |
30~49(歳) | 800 | 3,000 |
50~69(歳) | 800 | 3,000 |
70以上(歳) | 800 | 3,000 |
妊婦 | 800 | - |
授乳婦 | 800 | - |
平成20年の国民健康・栄養調査によるとリンの摂取量は、男性が平均1,051mg/日、女性が平均906mg/日と報告されており、上記の推定平均必要量を充たす結果が示されています。
代謝・排泄
経口摂取されたリンは消化管で60~70%が吸収され、副甲状腺ホルモンの働きにより血清中リン濃度と尿中リン排泄量が調節されているといわれています。
法規制など
規制法律名 | 規制項目 | 規制値 |
環境基本法 | 水質汚濁に係る環境基準(生活環境項目) | 全リンとして排出を規制 |
環境基本法 | 土壌の汚染に係る環境基準 | 検出されないこと(有機リンとして) |