- 化学物質ファクトシート「346.モリブデン及びその化合物」 環境省
- ミネラルの事典 朝倉書店
- 日本人の食事摂取基準(2015年版) 厚生労働省
モリブデン
モリブデンは、常温で銀白色の金属です。酸や熱に強く、空気中ではすぐに酸化されて表面に酸化皮膜をつくるため、ステンレスや低合金鋼の原料として使われています。また、モリブデンを加えた金属は大きな強度が得られることから、自動車やパイプラインに用いられる特殊鋼の原料として用いられ、また、モリブデン酸ナトリウムは、不凍液の原料、顔料用の発色剤、染料媒染剤、金属表面処理剤、防錆び剤の原料などとして使われています。
モリブデンは、動物や植物の必須微量元素であるため、農業用微量肥料や飼料添加物としても用いられています。
摂取
モリブデンは必須微量元素であり、生体内の酵素例えば核酸の代謝に関与しているキサンチンオキシダーゼやアミノ酸の分解に関与しているアルデヒドオキシダーゼなど重要な酵素の活性中心として作用しています。モリブデンは他の重金属に比べて比較的毒性は弱く、蓄積などによる弊害も報告されていません。水道法で0.07mg/L以下と規制されていますが、水道水、河川や地下水からはこれらの目標値や指針値を超える濃度のモリブデンは検出されておらず、飲み水を取込むことによる健康への影響は小さいと考えられています。
厚生労働省は、健康な個人または集団を対象に、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すものとして「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」を策定しました。
モリブデン摂取の出納実験の結果から、推定平均必要量及び推奨量が設定されています。穀物や豆類はモリブデンを高濃度に含有していますが、健康障害などは報告されておりません。しかしながらモリブデン過剰摂取における有害性の報告を考慮して耐容上限量が設定されています。
代謝・排泄
経口摂取されたモリブデンは、消化管から吸収され血液を介して肝臓、腎臓、骨に分布します。吸収されたモリブデンの大部分は腎臓から尿中に排泄されます。
食事摂取基準単位:µg/日
男性
年齢 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 |
0~5(月) | - | - | 2 | - |
6~11(月) | - | - | 10 | - |
1~2(歳) | - | - | - | - |
3~5(歳) | - | - | - | - |
6~7(歳) | - | - | - | - |
8~9(歳) | - | - | - | - |
10~11(歳) | - | - | - | - |
12~14(歳) | - | - | - | - |
15~17(歳) | - | - | - | - |
18~29(歳) | 20 | 25 | - | 550 |
30~49(歳) | 25 | 30 | - | 550 |
50~69(歳) | 20 | 25 | - | 550 |
70以上(歳) | 20 | 25 | - | 550 |
妊婦(付加量) | ||||
授乳婦(付加量) |
女性
年齢 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 |
0~5(月) | - | - | 2 | - |
6~11(月) | - | - | 10 | - |
1~2(歳) | - | - | - | - |
3~5(歳) | - | - | - | - |
6~7(歳) | - | - | - | - |
8~9(歳) | - | - | - | - |
10~11(歳) | - | - | - | - |
12~14(歳) | - | - | - | - |
15~17(歳) | - | - | - | - |
18~29(歳) | 20 | 20 | - | 450 |
30~49(歳) | 20 | 25 | - | 450 |
50~69(歳) | 20 | 25 | - | 450 |
70以上(歳) | 20 | 20 | - | 450 |
妊婦(付加量) | - | - | - | - |
授乳婦(付加量) | +3 | +3 | - | - |
モリブデンは穀物や豆類に豊富に含まれており、平均的に1日あたり225µg、大豆製品を豊富に含む献立の場合に1日あたり300µgのモリブデンを摂取しているといわれています。
法規制など
規制法律名 | 規制項目 | 規制値 |
水道法 | 要検討項目(目標値) | 0.07mg/L |
環境基本法 | 水質汚濁に係る環境基準(要監視項目 指針値) | 0.07mg/L以下 |