血液透析患者において、血清マグネシウムではなく、毛髪マグネシウムが左心室壁厚と関係している
Akinobu Ochi, Eiji Ishimura et al.: Circ. J. 77, 3029-3036 (2013).
Hair Magnesium, But Not Serum Magnesium, Is Associated With Left Ventricular Wall Thickness in Hemodialysis Patients
越智章展、石村栄治 ほか (大阪市立大学医学部)
抄録:
背景:
細胞外のマグネシウムは体内マグネシウム量の約1%に相当する。臨床的には、血清マグネシウム濃度が測定されているが、血清濃度は必ずしも体内マグネシウム状況を反映してはいない。非透析患者では、マグネシウム低値と心血管疾患との関連が報告されているが、血液透析患者での研究はほとんど無い。本研究は、マグネシウム低値が毛髪マグネシウム濃度に反映されて心エコー指標と相関するとの仮説のもとに、長期血液透析患者を対象に実施された。
方法と結果:
男性の血液透析患者79名を対象とし、毛髪マグネシウム濃度を誘導結合プラズマ質量分析機を用いて測定し、マグネシウムと心エコー指標との関係が調べられた。 毛髪マグネシウム濃度と血清濃度の間には、統計学的に有意な相関は見られなかった。左心室mass index (LVMI)高値を示す患者群の毛髪マグネシウム濃度は、LVMI低値患者群の濃度よりも有意に低かった。毛髪マグネシウム濃度は後左心室壁厚、心室中隔厚、左心室壁厚(LVWT)及び相対壁厚との間に有意な負の相関を示した。しかしながら、血清マグネシウム濃度はこれらの心エコー指標と相関しなかった。
結論:
血液透析患者において、毛髪マグネシウム濃度は血清マグネシウム濃度とはindependentなバイオマーカーであり、血清濃度ではなく、毛髪濃度がLVWTと有意な負の相関を示した。心筋組織中マグネシウムの低値が、毛髪で検出されたように、血液透析患者での左心室肥厚と関係しているのかもしれない。