自閉症スペクトラム障害における幼少期ミネラルアンバランスの評価
Hiroshi Yasuda and Toyoharu Tsutsui: Int. J. Environ. Res. Public Health: 10, 6027-6043 (2013).
Review
Assessment of Infantile Mineral Imbalances in Autism Spectrum Disorders (ASDs)
安田 寛、筒井 豊春 (ら・べるびぃ予防医学研究所)
抄録:
遺伝子と環境との間の相互作用が自閉症発症の有力なメカニズムと現在は考えられている。この総説では、0-15歳の自閉症児1,967名(男児1,553名、女児414名)を対象としたメタロミクス研究(頭髪中の26種の微量元素濃度の一斉分析)の結果を総括し、自閉症病因論における幼少期ミネラルアンバランスのエピジェネティックな役割に関する最近の進展について考察している。自閉症被験児1,967名の内、584名(29.7%)、347名(17.6%)が亜鉛不足、マグネシウム不足であり、特に、0-3歳児では、亜鉛不足発生率が男児で43.5%、女児で52.5%と評価された。他方、339名(17.2%)、168名(8.5%)と94名(4.8%)において、それぞれ、高濃度のアルミニウム、カドミウムと鉛の蓄積が認められ、水銀、ヒ素では2.8%以下の比率であった。これら有害金属異常蓄積も幼少児で多く観察され、アルミニウム、カドミウム、鉛、ヒ素と水銀の異常蓄積率は、それぞれ、20.6%、12.1%、7.5%、3.2%と2.3%であった。これらの結果は、幼少期の亜鉛とマグネシウムの不足、並びに、有害金属異常蓄積が自閉症の発症に関わり、おそらく、遺伝子発現・制御にエピジェネティック変異を誘発している可能性が示唆され、更に、自閉症児の神経発達と治療には幼少期time windowが存在することを示している。かくして、自閉症児の早期スクリーニング/評価と治療/予防の為に、幼少期でのメタロミクス解析が有用であるかもしれない。
キーワード:自閉症スペクトラム、神経発達障害の病因論、幼少期の亜鉛不足、有害金属蓄積、メタロミクスプロフィル、エピジェネティック変異、治療における「幼少期 time window」
International Journal of Environmental Research and Public Health 10, 6027-6043 (2013). (英文)(外部リンク)