日本人における水銀・砒素の蓄積と加齢・地域差に関する研究 :地域別の解析
2010年6月第10回 日本抗加齢学会
ら・べるびぃ予防医学研究所 安田 寛
目的
日本人成人男性において毛髪中の水銀、砒素、沃素、カリウムなどのミネラルが加齢と正の相関、カルシウム、マグネシウム、銅、亜鉛などが負の相関を示すことを明らかにし、体内のミネラルバランスが加齢に影響を及ぼす可能性を報告してきた1)。今回、加齢と最も高いせい相関を示した水銀について、2万8千余名の検査データに基づき、年代差・性差・地域差について都道府県別に解析したので報告する。
方法
対象:平成17年6月から平成20年3月の間に毛髪検査を受けられた日本人男女28,424名の検査データを解析した。毛髪中水銀濃度は、毛髪試料を秤量・洗浄・溶解した後、誘導プラズマ質量分析機(ICP-MS)を用いて測定した1)。
結果と考察
毛髪中水銀濃度は、いずれの地域・年代層においても、男性のほうが女性よりも明らかに高い平均値を示した。又、男女共に、加齢とともに水銀値は高くなり、50-60歳代でピークを示した後、更なる高齢化とともに低下することも確認された。地域別で見ると、東京都・神奈川県・千葉県・山梨県・静岡県など関東圏の居住者で高く、香川県・徳島県・広島県・大分県などの西日本地域の居住者で低かった。同じ西日本でも、高知県・和歌山県・三重県の居住者では、関東圏に匹敵する高い値を示した。四国地域の中でも、太平洋側と瀬戸内海側で地域差が見られた。水銀値が10ppmを越える人の比率でも、神奈川県では6%を越え、東京都・静岡県・高知県・和歌山県で5-6%であったのに対し、香川県・徳島県・広島県などでは1%以下であった。
結論
日本人では、男女共に、加齢と水銀蓄積量との間に有意な正の相関があることが確認された。水銀に拮抗し、加齢と負の相関を示すミネラル“亜鉛・カルシウム・マグネシウム・セレン”は加齢に関わる生理・生化学反応を抑制するミネラルが考えられ、これらのミネラルの適度な摂取がアンチ・エイジングにつながると推測された。
文献
- Yasuda H et al. Anti-Aging Med4: 38-42(2007)
|