幼少児における有害金属の蓄積(第2報) :鉛・カドミウム・アルミニウムの蓄積
2010年5月第80回 日本衛生学会総会
ら・べるびぃ予防医学研究所 安田 寛
目的
我々は、誘導結合プラズマ質量分析機(ICP-MS)を用いて、有害金属の体内蓄積を網羅的に検査・研究し、幼少の子供達で鉛・カドミウム・アルミニウムが蓄積していることを報告してきた1)。今回、これらの有害金属の体内蓄積について更なる検証を行う目的で、日本人2万8千余名の毛髪ミネラル検査結果を用いて解析したので報告する。
対象・方法
毛髪ミネラル検査・研究に同意され、平成17年3月から平成19年9月までの間にミネラル検査を受けた日本人28,424名の検査データを男女別・年代別に解析した。毛髪中有害金属(水銀・砒素・鉛・カドミウム・アルミニウム)濃度は、各被験者の毛髪試料を秤量・洗浄・溶解した後、誘導結合プラズマ質量分析機(ICP-MS)を用いて一斉分析した1)。
結果・考察
日本人28,424名の毛髪ミネラル検査データに基づき、有害金属蓄積と加齢との関係を男女別に解析した。毛髪中水銀濃度の幾何平均値は加齢と共に高くなり、60歳代で最高値を示すこと、又、男女差があることも確認された。水銀蓄積量には地域差があり、東京都・神奈川県などの関東地域で高く、静岡県・三重県・和歌山県・高知県などの太平洋沿岸地域でも高かった。毛髪中砒素濃度は、80歳代まで加齢と共に高くなり、男女差があることも確認された。幼少児では、水銀・砒素濃度の平均値は、成人に比べて高くはなかった。有害金属の中でも、鉛・カドミウム・アルミニウムの3元素は、いずれも、成人よりも小児で男女ともに高く、特に、0-3歳児で高い平均値(成人の2-2.5倍)を示した。幼少児で検出された最高値は、成人平均値の68倍・280倍・20倍であった。
結論
有害金属には、加齢と共に蓄積するタイプ(水銀・砒素)と、幼少児で蓄積するタイプ(鉛・カドミウム・アルミニウム)であることが明らかにされた。後者の有害金属、鉛・カドミウム・アルミニウムについては、幼少児での異常な蓄積が懸念され、汚染原因・経路の解明と共に、注意・対策が必要だろう。
文献
- Yasuda H et al: Biomed. Res. Trace Elem.16: 39-45(2005); 19: 57-62(2008)
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