日本人における水銀の体内蓄積と加齢に関する研究 :地域別の解析
2009年5月第9回 日本抗加齢医学会総会
ら・べるびぃ予防医学研究所 安田 寛
目的
日本人成人男性において、水銀・砒素・沃素・カリウムなどの毛髪中濃度が加齢と正相関し、カルシウム・マグネシウム・銅・亜鉛濃度が負の相関を示すことから、体内ミネラルバランスが加齢に影響を及ぼす可能性を報告してきた1)。今回、加齢と正相関する有害金属(水銀・砒素)の体内蓄積について2万8千余名の検査データに基づき、年代差・性差・地域差を都道府県別に解析したので報告する。
方法
対象:平成17年6月から平成20年3月の間に毛髪ミネラル検査を受けた日本人男女28,424名の検査データを用いて解析した。毛髪中水銀・砒素濃度は、毛髪試料を秤量・洗浄・溶解した後、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて測定した1,2)。
結果と考察
毛髪中水銀・砒素濃度は加齢と共に高くなり男性のほうが女性よりも高い平均値を示した。水銀値は50-60歳代でピークを示し、更なる高齢化とともに低下した。水銀値は東京都・神奈川県・千葉県・山梨県・静岡県など関東圏の居住者で高く、香川県・徳島県・広島県・大分県など西日本で低かった。太平洋岸の三重県・和歌山県・高知県では関東圏に匹敵する高値を示し、瀬戸内側との間に地域差が見られた。砒素値は、山口県・島根県・鳥取県・福井県・富山県・秋田県・岩手県などの地域で高く、沖縄県では低かった。水銀値が10ppmを超える比率では、神奈川県で6%を越え、東京都・静岡県・高知県・和歌山県で5-6%であるのに対し、香川県・徳島県・広島県では1%以下であった。
結論
日本人では、水銀・砒素蓄積量と年齢との間に有意な正の相関があることが確認された。加齢と負の相関を示し、水銀・砒素に対抗するミネラルである“亜鉛・マグネシウム・カルシウム・セレン”は、加齢に関わる生理化学反応を抑制すると推測され、アンチ・エイジングには、これらのミネラルの適度な摂取が望まれる。
文献
- Yasuda H et al: Anti-Aging Med.4: 38-42(2007)
- Yasuda H et al: Environ Health Prev Med.14: 261-266(2009)
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