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小児における有害金属の蓄積(第1報)
:母親と子どもとの関係

2009年3月第79回 日本衛生学会総会
ら・べるびぃ予防医学研究所 安田 寛

目的

我々は、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて、有害金属の体内蓄積を網羅的に検査・研究し、幼少の子供達で鉛・カドミウム・アルミニウムが蓄積していることを報告してきた1)。今回、これらの有害金属蓄積の原因を調べる目的で、「食の安全・監視市民委員会」の協力の下に、80組の母親とその子供の毛髪試料をペアで検査することができたので、その解析結果について報告する。

対象・方法

本研究に同意された親子80組(子供の年齢:0-12歳)を対象として本試験を実地した。また比較のために、母親と同年代の女性対象群を設けた。各被験対象者から送付された毛髪試料(約0.2g)を用いて、毛髪中の有害金属(水銀・砒素・鉛・カドミウム・アルミニウム)の濃度を誘導結合プラズマ質量分析機(ICP-MS)を用いて一斉分析した。1)

結果・考察

子供たちの毛髪中水銀・砒素濃度の平均値は、男女共に、母親群のレベルよりも少し高い程度であり、有意差は見られなかった。しかし、鉛濃度の平均値は女児で母親群の2.6倍、男児で2.8倍と高く、カドミウムで2.9倍と3.4倍、アルミニウムでも2.6倍と2.4倍と、母親群よりもそれぞれ優位に(p=0.0076-0.0001)高かった。また、子供とその母親との親子関係を調べたところ、水銀と砒素では、母親と子供との間に明らかな正の相関が見られた。鉛では、親子の相関関係は見られるものの、母親よりも10倍以上高い値を示す小児が7例見られた。また、カドミウムとアルミニウムでも、それぞれ9例と5例が母親よりも10倍以上高い値を示し、中には100倍以上高い値も観察された。年齢層別の解析では、鉛・カドミウム・アルミニウム共に0-3歳児で最も高く、4-9歳児、10-12歳児と年齢が高くなると共に低くなったが、母親群のレベルまでは低下しなかった。

結論

有害金属の中でも、鉛・カドミウム・アルミニウムが、小児、中でも幼少児で特に蓄積していることが確認され、蓄積原因・経路の解明と共に、注意が必要だろう。


文献
  1. Yasuda H et al: Biomed. Res. Trace Elem. 16: 39-45(2005); 19: 57-62(2008)