加齢とミネラルに関する研究(第2報) :重回帰分析によるミネラローム解析
2007年7月第7回 日本抗加齢医学会総会
ら・べるびぃ予防医学研究所 安田 寛
目的
生物の固有の寿命は、生体が保有する活性酸素消去能と相関すると言われ、加齢とミネラルとの関連も推測されている。昨年、本総会で、毛髪中水銀値が加齢と相関することを報告した。今回、日本人成人男性の毛髪中必須及び有害金属など24元素を測定し、加齢ミネラルとの関係について重回帰分析を用いて解析した。
方法
20~60歳の成人男性1931名の毛髪試料を用いた。毛髪中ミネラル量は、誘導プラズマ質量分析機(ICP-MS)を用いて測定した1)。加齢とミネラルとの関係を、統計解析ソフト(JMP6)を用いて多変量解析した。
結果
測定した24種のミネラルの中で、加齢と最も高い正相関を示した元素は水銀であった(r=0.333、p<0.0000)。次いで砒素(r=0.185)、沃素(r=0.156)、臭素(r=0.128)、カリウム(r=0.116)と続き、いずれも年齢との相関に有意な正相関を示した。一方、加齢と負の相関を示すミネラルはカルシウムであり(r=-0.218、p<0.0000)、次いで銅(r=-0.185)、マグネシウム(r=-0.183)、亜鉛(r=-0.120)と続き、いずれも有意な負の相関を示した。
重回帰分析の結果では、水銀、沃素、臭素、砒素、カドミウム、ナトリウムが、年齢と有意な正相関を示し、一方、カルシウム、銅、モリブデン、亜鉛、アルミニウムが優位な負の相関を示した。加齢と相関するミネラル相互の回帰直線式から、「ミネラル年齢」を推測することができた。
結論
日本人男性では加齢と共に水銀が蓄積し、カルシウム・マグネシウム・亜鉛が不足する傾向にあることが示唆された。加齢と負の相関を示すカルシウム・マグネシウム・銅・亜鉛は、加齢に関わる生理反応を抑制するミネラルと考えられ、これらのミネラルの適度な摂取がアンチエイジングにつながると推測された。
文献
- Yasuda H. et all.: Biomed. Res. Trace Elem. 17: 316-321
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